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島(解説編)

 著者千野栄一は,チェコ語を専門とする言語学者。数年前に亡くなられました。名エッセイストとしても有名で,言語学エッセイをたくさん書いています。「島」もその一つ。
 言語学者の書いたものであるため,専門知識がないと正確には理解できない。私も全部理解できたとはいえません。

 野暮を承知でちょっと解説をすると…。

 強いて珍しい音と言えば,舌尖あるいは舌端が上の前歯の裏に近づくか,軽く触れて巾の広い狭めを作り,左右の舌縁は奥歯などに密着して空気が横にもれないようにし,口むろのみを通して送られてくる呼気が舌尖付近を通るときに生ずる摩擦音があり,それが有声と無声の対立をなすペアーを持っていることぐらいであった。

 要するに,thの有声音と無声音のことでしょう。英語以外には,スペインのスペイン語にあるようです(南米のスペイン語からは消失)。

 
名詞には性がないのに数があり,

 ヨーロッパの言語(印欧語)の多くは名詞に文法的な「性」と「数」がありますね。「性」がない英語は例外的なのでしょう。

 動詞はある一つの動詞が八つの変化形を持つのがもっとも数が多く,基本的な動詞には変化形が五つしかなく,あるmodalな動詞にはたった一つの語形変化しかなかった。

 英語の動詞の活用はシンプルです。普通は基本形以外に三単現と過去,過去分詞,現在分詞ぐらいしかない。最も多いbe動詞で,be,am,are,is,were,was,be,beingの八つ。たった一つの語形変化しかないのは,助動詞のmust?

 未来を示す動詞に過去形があるという珍現象で,主文の時制が変わると副文の方の時制もそれにスライドさせるという結果生じたものであった。

 これは未来完了のことかな。

 三人称単数を示す人称代名詞は,まず人か人でないかで区分し,人の場合にのみ性の区別があって,そのほかは動物も植物も無生物もいっしょくたに示していた。

 he/sheが人間だけに適応されること,複数になるとtheyというふうにいっしょくたになることも,他の欧州の言語には少ない。

 この島の居酒屋でなにやら得体のしれない,それでいてなんとなく魅力のある強い酒


 いうまでもなくウイスキーですね。

 この言語には三つの格があることになっていた。しかし,その言語学者はどう考えても名詞に三つの格を認めることはできず,代名詞にあるとされている格もSuppletive(補充法的)なもので,この言語の記述に格というカテゴリーは形態論では不要なものに思われた。

 三つの格とは,主格,目的格,所有格でしょうか。英語は,人称代名詞(he,his,himなど)を除き,「格変化」が失われています。

 形態論上の形式が非常に少なく,したがって語順により主語と目的語を区別していて,この点はその言語学者が知っていた中国語と似ているような気もした。しかし,中国語とその言語は構造の深い所で違っており,この島の言語は主語・述語という二項形式が構造の基礎にあった。

 もともと屈折語(活用が多い)だった英語は,時代を経るにつれ,印欧語の中でいちばん「孤立語」的性格が強い言語になりました。活用のない中国語は,代表的な孤立語。語順の重要性は,中国語やタイ語と同じかも。主語が省けない(省くと命令文になってしまう)ことは英語の大きな特徴でしょう。

 本の第一頁にある1を示す語を見いだしたとき,三文字で書かれたこの語の中で,たった一文字だけが実際の音と対応するという実に変なアルファベットだった。

 oneという3文字のうち,〔ʌ〕という発音に関係がある文字は,nのみ。

 発音とは大きく異なったいくつかの文字のあつまり

 フランス語,ドイツ語,スペイン語…。アルファベットを使うたいていの言語で,綴りと発音は規則的です。英語は例外だらけ。

「夜」を意味する語と,「騎士」を意味する語は同じ発音でありながら偏だけで区別されているのは,漢字で「分かれる」を意味する「支」が「枝」や「肢」を作るのを思わせるところがあった。

 nightknightですね。kを偏に見立てているのでしょう。楽しい発想です。

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