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バンコク便り~5月騒乱の傷跡(2010年7月20日記)

 私の出張先は,ラチャダー通りにある高層ビル。昨年竣工した出来立てのビルで,またテナントも埋まっていません。

 先の5月騒乱時,このビルが襲撃されたという報が入りました。撃ち込まれた銃弾により,一階のガラスが砕けたのです。最初は流れ弾でも飛んできたんだろうと思っていましたが,よく聞いてみると,どうも狙われたらしい。なんでもビルのオーナーがタクシンの奥さんか,その親戚らしく,反タクシン派による意図的銃撃といううわさがもっぱらです。

 先の騒乱では,襲撃や放火の対象にされたのは反タクシン派の財閥の所有物で,犯人はタクシン支持派ということですから,反タクシン派による攻撃は「例外的」といえるのでしょうか。

 今回出張してみると,破損したガラス(外壁を兼ねた高さ3メートルぐらいの大ガラス)はそのままで,一時的に板張りされていました。もう2カ月も経っていて,直そうとすれば簡単に直せるだろうに,いまだに放置してあるのは,何か意図があってのことでしょうか。

 そもそもここ数年のタクシン派と反タクシン派の対立の根元には,地域間格差(=経済格差)がある。いわば,タイ内部の「南北関係」に起因します。

 一般に南北関係といえば,豊かな北半球と貧しい南という構造を指しますが,タイの場合裕福なのはバンコクを中心とした南部地域で,北部は貧しい。その格差は暴力的でさえあります。歓楽街のあふれている風俗業の女性はほとんどが貧しい北部出身。大昔に日本でも見られた娘の身売りは,タイでは現在進行形です。

 10年ほど前に登場したタクシン政権は,貧しい南部に補助金を出し,インフラに投資し,医療や教育を改善する公約を出して,実際に実行してきた。しかし南部の豊かな人々にとっては,南部が中心に稼いだ金を北部にバラまいていると移ったのでしょう。それに加えて,タクシンには公企業を私物化し,不正蓄財を行った,貧しい人たちに金をばらまくことで票を買った(不正選挙)などの疑惑があり,政治とカネの問題に敏感なエリート層(金持ち層)はタクシンを嫌っている。

 しかし,選挙をしちゃうと,国民の半分以上を占める農民票はタクシンに集まるので,タクシンが勝ってしまう。だから選挙ができず,選挙の洗礼を受けていないアピシット首相の正統性が保てない… とまあ,こんなところでしょうか。

 騒乱の終息時には,終息を望まない暴徒たちにより,高級住宅街への放火が広がりました。私が以前,出張時に宿泊していたあたり(スクンビット)も20箇所以上で火の手があがったということで,そのあたりに多く居住する日本人にも不安を与えたようです。

 今回の出張時には,バンコク市内は見かけ平静を保っていましたが,今は農村部が農繁期なので静かなだけという分析もあります。また11月に予定される選挙に向けて,不穏な動きが広がる可能性もある。タイ社会の構造的問題が一朝一夕に解決するとは思われませんが,個人的にはまた出張中止などということにならないことを願います。

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